A map of Algorithmic / Random walks in London (2023)

インターネット誕生後、私たちが情報を入手する方法や情報の量は急増し、情報過多と言われている。この現状から、ユーザーの負担を軽減するために、インターネット企業はユーザーの個人情報などを利用し、ユーザーの興味のありそうな情報を事前に取捨選択するアルゴリズムを開発した。しかしインターネット企業は自分の過去の検索結果や閲覧履歴から自分と似ている意見を持つ人の情報しか見せないことにより、「フィルターバブル」と言われている空間を作り出している。これは意見の違う人と話す機会を減らし、社会分断を生む可能性がある。

私はこの現状に対し2種類のアプローチを提案する。一つは、アルゴリズムの理解促進によるデータリテラシーの向上である。D’Lgnazioがデータを収集し資源を持っている国家や企業に対し、非技術分野つまり専門家ではない一般的なユーザーのデータリテラシーを育成することが重要だと言っている。私はアルゴリズムを可視化することでテクノロジーの批判的考察をし、データリテラシーを育成できるのではないかと考えた。もう一つは、ランダムネスを取り入れた批判的実践である。法律家のキャスサンスティーンは計画的でない予期せぬ出会いは民主主義そのものと言っている。つまり、ランダムネスを取り入れ、主体的に情報を手にいれる行動が現状を変える方法の一つになり得るのではないかと考えた。
位置情報とアルゴリズムを組み合わせたGoogleMapsの情報は物理空間の私たちの行動に直接行動変容を生み出す点で特異性がある。よってGooglemapsの情報がどのようなアルゴリズムによって私たちに表示されるのかをダイアグラムを用いて可視化することを考えた。
また、ランダムネスを用いた批判的実践は街を探索することを提唱したシチュアショニストやジェームズブライドルのランダムネスとはテクノロジーから離れた物理空間で生み出されるという定義から、サイコロを使って街を歩くrandomwalkを開発し、ランダムに街を歩いた際に自分が興味を持った情報を主体的に収集し、ネットワーク図を用いて可視化する手法を考案した。

 

 

本作品はgooglemapsに表示された最短距離とサイコロを使って決めたランダムの経路を組み合わせてLondon市内を歩き、道中で自分の個人情報とgoogleのアルゴリズムを組み合わせて表示されるgooglemapsの情報(受動的に受け取る情報)とその道中で自分が興味を持ち記録した情報(能動的に取得する情報)の2つを比較した地図である。
この地図は3d dimentionalの建築模型のような形をし、3つの要素から成り立つ。一つ目はgooglemapsのアルゴリズムの仕組みを示したフローダイアグラムである。道中で表示されたgooglemapsの情報を定量分析を通じて6種類に分け、その6種類の情報ががどのようなgooglemapsのアルゴリズムによって表示されるか示している。

 

2つ目は道中で能動的に取得した情報を定質分析したネットワーク図である。道中で記録した情報を5種類に分類した。そして自分がなぜそのものや現象に興味を持ったのかを文章化し、そこから特に注目すべきキーワードを抽出。同じキーワードを線で結んでいる。

 

 

そして3つ目は2つの違った取得方法の情報をロンドンの地図にマッピングして合体させた中心部分である。

 

修士作品の建築模型は、説明的な詳細は最小限に抑えられている。これを補足するために、紙の地図のようなアコーディオン折りの本の形をしたZINEを制作。

ZINE (表)
ZINEの表面には、モデルの各レイヤーについての詳細な洞察が、裏面には、私が収集し、ロンドンの地図にマッピングしたデータ収集記録の具体的な詳細が記載されている。

 

 

 

ZINE (裏)
裏面には、グーグルマップやサイコロを使ったランダムウォークからの情報が含む。グーグルマップのデータとロンドンの地図情報は普通の紙に印刷し、ランダムウォークで得た情報はシースルーの背景を持つ半透明の紙に表示している。このデザインにより、観客は両方の情報を別々に観察することができる。