
Random Walk
Random Walkとはサイコロを振って出た目に沿って街を探索し、道中で見つけたものを写真で撮影し収集・可視化するワークショップです。 サイコロに身を委ねランダムに街を歩き、道中で気になるもの(落ち葉、標識の色、天気などの現象などなんでも)を意識的に探し写真を撮ります。写真を通った経路にプロットしながら他の人と写真について共有し、人によって感じ方が違う街の様々な側面を観察してみましょう。
なぜランダム? Googleなどのインターネット企業は膨大な情報からユーザーそれぞれに情報をだし分けるアルゴリズムを使用し、ユーザーに合わせた情報、広告を提供しています。しかし、それはその過程で偶然の出会いを犠牲にし、利益を優先しているともいえるでしょう。このような仕組みにより、同じ意見や嗜好を持つ人々のみが集まるフィルターバブルと言われる空間が生まれ、政治的分極化を助長する要因となっていると言われています。 法学者キャス・サンスティーンは、この分極化を解決する方法の一つとして最適化された情報ではなく予期せぬ情報に触れ、新たな発見や人々と出会うことの重要性を提案しています。 では、予期せぬ情報に触れるとはなんでしょう。アーティストのジェームズ・ブライドルはそれを「ランダムネスに身を委ねること」と定義し、コントロールが不可能なシステムに直面したとき、人間中心的な道具やプログラムから離れ、周囲の世界との再接続するランダムネスこそが新しい価値を創出する鍵だと言います。 一方、思想家の東浩紀は観光客がたまたま出会ったものに惹かれ、たまたま出会った人々と交流するこの偶然性が既存の人間関係や記憶の伝承に「誤配=つなぎかえ」を引き起こすと述べています。私は、観光客だけでなく普段の生活でも、ランダムネスを取り入れ、予期せぬ情報に触れることで、誤配を生み出し新しい発見や作用を生み出す契機となるのではないかと考えました。 さらに、街をランダムに探索し、自分が興味を持ったデータを能動的に収集し、他の人と共有する行為は自分自身やその考え方の背景にあるものを省察したり、同時に、個人の行動が定量化され、商品化や監視、均質化されることへの抵抗にもなり得ると考えます。 私はランダムネスを利用した街の探索「Random Walk」を通じて、自分の個人情報が定量化され、アルゴリズムによって、ユーザーによって出し分けられる情報を受動的に得るのではなく、時にはランダムに身を委ねて、能動的に情報を得る行動をしてみることを提案します。
photo by iotoyamaguchi